熱中症で軽く死にかけた時の話
熱中症は、中度でも死を覚悟する
今年、あちこちで見かけた熱中症。
日と場所によっては、なんと気温40度。体温より高い。
気温40度って何ですか…お湯じゃん…みたいな気持ちです。
熱中症は本当に怖い。
中度程度でも、救急車と死を覚悟するレベル。
だから、無理しないでほしいし、周りも無理させないでほしいです。
というのも、私は数年前に熱中症にかかったことがあって、その時割と真剣に、
「やばい、これは死ぬかも」
と思ったのです。
搬送や入院は、まぬがれました。
とはいえ、人生であそこまで明確に死を覚悟した瞬間は、初めてでした。
というわけで、今回の記事は熱中症の体験談について。
日本救急医学会の「日本救急医学会熱中症分類 2015」によると、私の経験した熱中症の程度は、Ⅱ度です。
「熱中症診療ガイドライン 2015」P.16より、「日本救急医学会熱中症分類 2015」
軽度・中度・重度の程度で言うなら、中度にあたることになるのでしょう。
しかしさっきも書いていますが、中度でも死を覚悟するレベルでした。
さて、では私のリアルにして激ヤバな熱中症体験談、いってみましょう。
熱中症になった日の状況
数年前の夏、初めて熱中症になった、その日の朝。
私はとある駅の、出入り口付近にいました。
当時の私は派遣社員で、主にチラシ配りの仕事をしていました。
そして、この日もチラシ配りの仕事があったのです。
この時の状況はというと、体調面のコンディションは万全。
睡眠バッチリ、食事もバッチリです。
気候面は、何日も続く真夏日、カンカン照りの日差し。
チラシを配る場所は、アスファルトの上。
屋根など日差しをさえぎるものは、何もなし。
帽子をかぶり、半袖Tシャツで声をあげながら、チラシ配りです。
「水分補給はしっかりするように」と、口がすっぱくなるほど言われていたので、500mlのペットボトルに入ったお水を持参。
すぐとりだせるように、肩から斜めにさげたカバンに入れていました。
この条件でのチラシ配りはこれが初めてではなく、既に何度もこなしていました。
だから、この日も何事もなく、仕事ができるだろうと思っていたのです。
始まりは無音、手足の感覚、視界も…
大きな声でチラシを配りながら、タオルで汗をぬぐいつつ、こまめに水を飲み。
チラシを配り始めて、2、3時間ほど経った時、私の体に異変が起きました。
まるでテレビやラジオなどの音量をキュッと絞ったように、周囲の音が遠のいていく。
おや、と不思議に思う間もなく、手足の感覚がなくなっていきます。
冷たくも熱くもない。ただただ、感覚がない。
指先どころか、二の腕と太ももの途中までくらいまでしか、自分の手足を感じられませんでした。
そんな足で地面に立っているのが、すごくチグハグ。
まるで自分の足じゃないみたい。
同時に、視界も暗くなってきました。
四隅というか、視界の中心部分以外、全部見えなくなっている。
真っ黒な紙に、指で突いて空けた穴から、のぞいているような感じ?
直接穴に目をつけてのぞくというより、数十センチくらいの間をあけて、視界にいっぱいに映る紙ごと眺めているような。
視界そのものが狭まってる感じです。
手足の感覚がなくなるのも視界が暗くなるのも、初めての経験で、「え?え?」と戸惑いました。
そしてその数秒後すぐに、激しいめまいと吐き気に襲われました。
風邪でも経験したことのないレベルの、めまいと吐き気。
頭の中で脳みそが、洗濯機にぐるんぐるんかけられてるみたい。
吐き気がひどいのに、吐けるものがなくて、ひたすらに気持ちが悪かった。
「これはまずい」とだけは思いました。
「やばい、死ぬかもしれない?」
「救急車、呼んでもらうべき?でもちょっとやだな」
とも。
かなり怖かったですが、怖いくせに、救急車呼ばれるのを嫌がっているのがなんとも。
幸い、しゃがみこんだり崩れ落ちたりすることはなく、立って歩くことはかろうじてできました。
ゾンビみたいなヨロヨロした足取りで、派遣されていたお店まで戻り、体調不良の旨を伝える。
吐き気がおさまらなかったので、座れるところと万が一嘔吐した時のことを考え、お店の入っているビルのトイレへ。
今考えると、トイレにこもるのは悪手だったなと思います。
もしもこのトイレで意識をなくしてたら、本当に死んでたかもしれない。
もしも熱中症になったら、みなさんは、人目のあるところで休んでくださいね。
誰かがついていてくれるなら、さらに良しです。
このあたりになると、すさまじい寒気も襲ってきました。
冬の寒さとは違う、体の芯が凍えるような寒さです。
体が震えていたかまでは覚えていませんが、とにかく寒くて寒くて。
そしてこの頃には、自分がおそらく今熱中症になっていることに、見当がついていました。
正確には、「あの状況でなるなら、熱中症だろうな」みたいな感じだったのですが。
トイレに座りながら、ずっと頭を抱えてじっとしていること、20分とか、それくらいでしょうか。
ようやく寒気や吐き気、めまい等がおさまってきました。
峠は越えた、という安心感。
「まだ生きてる…」と思いました。
あと、救急車呼ばずに済んだ、とも思いました。
派遣先のお店と派遣会社に連絡して、さすがにその日は早退しました。
幸いなことに、特に後遺症などはなく、今も元気に暮らしています。
水分をとっていたのに、何故熱中症になったのか
さて、水分はきちんととっていて、体調面も特に問題なさげだったのに、何故熱中症になったのか。
理由はおそらく、塩分をとっていなかったから。
「熱中症予防には、水分補給が大事!」
というのは、みなさんよく聞くと思います。
私もそれを聞いていたので、この日も水分補給には気を遣っていました。
しかし本当は、熱中症予防には、水分補給だけでは不十分。
汗をかくと、水分だけでなく、塩分も失われます。
そのため熱中症予防には、水分だけでなく、塩分の補給も必須なのです。
だから、塩飴や塩タブレットをなめたり、スポーツ飲料などの塩を含む飲み物を飲んだりして、塩分もとらないと、本当はダメだったのでした。
汗をかくと体の水分と塩分が失われるため、水や薄い塩味の飲食物(スポーツ飲料や塩分を含むトマトジュース、冷たいブイヨンなど)を摂取して補充します。
当時、「汗をかくと、水分や塩分が失われる」ということ自体は、聞いた覚えがありました。
保健体育や、コマーシャルで。
でも、汗による塩分の喪失と熱中症が、結びついていなかった。
「熱中症予防には水分補給!」ばかり聞いていたので、水さえ飲んでいれば、大丈夫だと思っていました。
無知ゆえに塩分補給を怠ったため、起きた熱中症だったのです。
ちなみに、アルコールやカフェインの入った飲み物は、水分補給には向きません。
アルコール飲料やカフェイン入りの飲料は、水分補給に適しておらず、脱水を悪化させる可能性があります。
お酒好きな方の中には、
「暑い夏は、キンキンに冷えたビールで水分補給!」
という方もいるかもしれません。
しかし前述の通り、アルコールが入っているビールでは、水分補給になりません。
お酒以外の飲み物で、水分をとってくださいね。
夏は飲み物だけでなく、塩飴や塩タブレットも持ち歩こう
この出来事をきっかけに、私は夏になると必ず、塩タブレットを持ち歩くようになりました。
飲み物で水分補給、塩タブレットで塩分補給。合わせ技です。
何で塩飴じゃなくて塩タブレットかというと、飴だと溶けちゃうからっていう理由です。
ベタベタしちゃうと食べにくい、取り出しにくい。
塩タブレットを持ち歩く時は、1個ではなく、複数持ちます。最低3個。
炎天下での作業がなくても、ちょっと外を歩くだけでも、です。
あんな経験、もう二度としたくないですから…。
それに、いくつか持っていれば、他の人にあげることもできますし!
周りに聞いてみると、やっぱり、
「熱中症予防に、水分補給は意識してる。でも、塩分は意識していなかった」
という方が、とても多いのです。
飲み物は持ってるけど、塩飴や塩タブレットは、持ってない。
だから、夏に私と一緒に歩く人には、いつもお守り代わりに、持参の塩タブレットを渡しています。
周りの人にも、あの怖さは、できれば味わってほしくないです。
たとえやむを得ない外出だとしても。
飲み物を飲んで、タブレットをなめるだけで、ある程度熱中症を予防できるのですから。
ちなみに私愛用の塩タブレットは、カバヤ食品さんの「塩分チャージタブレット スポーツドリンク味」です。
青いパッケージの方。もう何年も愛用中。
グレープフルーツのような酸味が、お気に入りです。
味もバッチリです。おいしい。
ただし全然汗をかいてない時になめると、苦くてしょっぱいので注意。
逆に言えば、これをなめた時、飴のように甘く感じたら、熱中症一歩手前です。
私、まだ「塩分足りない=塩が甘い」を知らなかった時に、チラシ配りの先輩からタブレットをいただいて、
「ラムネみたいな見た目なのに甘い!こんな飴、あるんですね!?」
と本気で言って、タブレットをくれた方に、
「それ、熱中症になりかけてるよ!塩分足りてないと甘いんだよ!」
と言われ、さらにタブレットを渡されました。
それくらい甘く感じます。
ちなみにこの「普通の時はまずい、塩分が足りてないとおいしい」は、他の塩分補給アイテムや、「OS-1(オーエスワン)」などの経口補水液などでも、同じです。
あと、塩分チャージタブレットは夏季限定販売なので、それも注意。
夏なら、スーパーやドラッグストア、コンビニなどでも売っています。
紹介した塩タブレットに限らず、夏は塩分補給用のアイテムも持ち歩いておくと、安心ですよ。
熱中症は、とても恐ろしい状態です。
しかし、水分と塩分の摂取に気をつかうだけで、ある程度予防できるものでもあります。
どうか、水分だけでなく塩分の補給もしっかりして、熱中症を予防してくださいね。
この記事で、少しでも熱中症になる方が減りますように!